太陽光発電設備に雷が落ちた場合、どのような影響や被害が考えられるのか?
A. 誘導雷によってパワーコンディショナーに影響が出る可能性があります。
要約
もし雷が落ちたら?:
太陽光パネルに直接雷が落ちることは非常に稀で、雷の被害はほとんどが誘導雷によるものです。誘導雷は、近くの木や建物に落ちた雷が電気配線を伝って機器に影響を与える現象で、特にパワーコンディショナーの通信系ケーブルに被害をもたらし、結果的に、太陽光パネルによる発電に影響を及ぼします。
雷は防ぎ用がない?:
SPDや避雷針による対策はあるものの、完全ではありません。 誘導雷を防ぐためのサージプロテクトデバイス(SPD)は設置可能ですが、効果は100%ではありません。避雷針も同様に、雷を地面に逃がすものの、逃がした電流が戻る場合もあり、完璧な対策とは言えません。雷被害に備えるため、火災保険や自然災害保険への加入も併用することが推奨されます。
解説者

インタビュアー

雷による太陽光発電設備への影響は?
━━━もし太陽光パネルに雷が落ちたらどうなりますか?
もし雷が直撃してしまった場合、太陽光発電の設備は破損してしまいます。
ただ、太陽光パネルに雷が直接落ちたというケースは、これまで私たちも聞いたことがありません。
多くの場合、雷は木や電柱、建物の避雷針など、より高い場所に落ちます。
そもそも、雷によって太陽光発電設備に影響が出る場合、大きく分けて2つのパターンがあります。
1つ目は、雷が対象物に直接落ちて破損させる「直撃雷」。これは非常にまれで、太陽光パネルに発生するケースはほとんどありません。
2つ目は、木や電柱などに落ちた雷の電流が、地面や配線を伝って設備に影響を及ぼす「誘導雷」です。実際に太陽光設備にトラブルが発生する場合は、この誘導雷によるものが多く見られます。
そのため、雷によるリスクを完全にゼロにすることは難しいですが、避雷対策やアース(接地)処理、SPD(雷サージ保護装置)の設置などで、一定の予防策を講じることが可能です。
━━━誘導雷で壊れたケースは、あったのでしょうか?
はい、実は毎年のように起こっています。ただし壊れるのは太陽光パネルではなく「パワーコンディショナー(PCS)」が多いです。
パワーコンディショナー (PCS: Power Conditioning System):
太陽光パネルで発電した直流電力 (DC) を交流電力 (AC) に変換し、建物内で使用できるようにする装置。
パワーコンディショナーには2種類のケーブルが接続されています。
ひとつは、発電した電気を送るためのケーブル、もうひとつは、発電状況をモニタリングするための通信用ケーブルです。このうち、通信用のケーブルは微弱な電流しか流れていないため、雷の影響に弱く、誘導雷によって破損するケースが多いです。
その結果、パワーコンディショナー本体の交換や、監視装置の修理・交換が必要になるケースが発生します。
━━━誘導雷は、防ぎようがないのでしょうか?
一応対策としてSPD(サージプロテクトデバイス)を各通信機器の入り口に設置する対応策はあります。ただ、SPDを付けていれば100%防げるわけではありません。
SPD(サージプロテクタデバイス:Surge Protective Device):
雷などの突発的な過電圧(サージ電圧)が電気設備に侵入し、機器や配線にダメージを与えるのを防ぐための保護装置。
━━━避雷針の設置では防げないのでしょうか?
避雷針は対策のひとつではありますが、完全に防げるわけではありません。
避雷針に雷が落ちた場合、その電気は地面へ逃がされます。ただし、その逃がされた電気が他の機器や配線に流れ込んでしまうと、結果的に「誘導雷」として設備に影響を与える可能性があります。
また最近では、「避雷針を立てることで、むしろ雷を引き寄せやすくなるのでは」という見方もあり、避雷針の設計や設置の考え方も変わってきています。
そのため、近年では従来型とは異なる仕組みの新しいタイプの避雷針も登場しており、必要に応じてそういった選択肢も検討されるケースがあります。
とはいえ、万が一に備えるという意味では、火災保険や自然災害保険に加入していただくことも有効な手段のひとつです。
誘導雷によってパワーコンディショナーなどの設備が破損した場合でも、保険によって修理・交換費用がカバーされる可能性がありますので、導入時にはあわせてご検討いただくようご案内しています。
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