太陽光パネルが破損した場合、どのように対応すれば良いのか?
A. 破損の原因や程度によっては発電量が大きく低下するため、安全面・経済面から修理や交換の検討をお願いしております。
要約
物理的な破損とホットスポット:
太陽光パネルの故障には、雹(ひょう)や鳥による物理的な破損が多く見られます。加えて、鳥の糞や影によって特定部分に発熱が生じる「ホットスポット」も故障原因の一つです。この現象はパネルのセルの一部が発電できなくなることで起き、最終的にはセルの破損につながります。定期的な洗浄や設置環境の調整で予防が推奨されます。
クラスター断線の発生と対応:
太陽光パネルの内部構造は3つのクラスターで構成されており、1つが機能しなくなる「クラスター断線」が起こることがあります。この場合、出力が66%まで低下しますが、多くのメーカーが保証を提供しており、交換が可能です。原因としてはホットスポットやバイパスダイオードのショートが挙げられ、定期的なメンテナンスで故障箇所の特定が重要です。
ジャンクションボックスと交換判断:
パネル裏側にあるジャンクションボックスの故障も発生します。これは経年劣化や初期不良が原因となる場合があり、故障時には電気が流れなくなることもあります。交換が必要かどうかは故障の度合いや影響範囲により異なり、売電専用設備と自家消費型設備でも判断基準が異なります。安全性の確保を最優先とし、状況に応じた対応が求められます。
解説者

インタビュアー

太陽光パネルが破損した場合、どのように対応すれば良いのか?
物理的な破損とホットスポット
━━━太陽光パネルが壊れる要因には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
まず、物理的に割れることが挙げられます。例えば、雹(ひょう)が降ってきたり、鳥が石を落とすなどして割れるケースが最も多いと思います。
━━━コントロールできない原因が多いですね。それ以外には、どのような要因が考えられるのでしょうか?
太陽光パネルの故障にはさまざまな種類がありますが、おそらく最も多いのが「ホットスポット」と呼ばれる現象です。太陽光パネルの上に鳥の糞が付着したり、近くに電柱があって常に影が一部にかかっている場合などに発生します。
太陽光パネルにはセルと呼ばれる太陽電池が詰まっていて、それらが直列でつながっています。その一部に影がかかると、その部分だけが発電できなくなり、抵抗が生じます。この抵抗が発熱の原因となり、最終的にセルが壊れてしまうのです。これを「ホットスポット」と呼んでいます。
ホットスポットの故障箇所を確認するためには、ドローンに搭載したサーモカメラを使用することがあります。サーモカメラで撮影すると、ホットスポットが赤く表示されるため、故障箇所を特定しやすくなります。
━━━これは防ぎようがないのでしょうか?
そもそも、影がかからないように設置することが大前提です。鳥の糞に関しては完全に防ぐのは難しいため、定期的に洗浄や清掃を行い、早めに取り除くことをお勧めしています。
クラスター断線の発生と対応
━━━他にはどのような故障がありますか?
最も厄介だと考えられるのが「クラスター断線」や「クラスター故障」と呼ばれる問題です。
太陽光パネルは内部が3つの「クラスター」(電池のグループ)に分かれており、これらが並列で構成されています。3つあるクラスターのうちの1つが機能しなくなると、残りの2つだけで発電する状態になり、全体の出力がおよそ3分の2に低下します。
━━━クラスター故障とクラスター断線は同じ意味ですか?
はい、同じ意味です。クラスター自体が電気的に壊れた状態、または回路が断線した状態を指します。
━━━そのような故障が起きた場合、保証はどうなるのでしょうか?
一般的にパネルメーカーは10~20年の出力製品保証を提供しています。たとえば10年目には82%、20年目には71%程度の出力が保証されるのが一般的です。400Wのパネルであれば、10年経過後に328W、20年経過後に284Wが保証されるイメージです。
しかし、クラスター断線を起こして3つのうち1つが発電しなくなると、出力は66%に落ち込みます。そのためメーカーの保証条件に適合する可能性が高く、保証対象となるケースが多いです。私たちはの役割としてはメンテナンスサービスを通じて故障を特定し、お客様に報告した上で、保証を活用してパネルの交換を手配します。
━━━1クラスターが壊れるのは、例えばホットスポットが原因だったりするのでしょうか?
はい。ホットスポットで回路の一部が切れると、クラスターが故障する場合があります。
3つあるクラスターのうち1つが機能停止しても、残りの2つは「バイパスダイオード」という回路によって稼働し続けます。しかしバイパスダイオード自体がショートすると、すべてのクラスターが機能しなくなることもあります。
━━━バイパスダイオードがショートする原因は何でしょうか?
物理的な衝撃や電気的な経年劣化、製品自体が抱えていた初期不良が時間の経過とともに顕在化するケースなどが考えられます。
太陽光パネルも電化製品の一種である以上、一定の確率でこうした故障が含まれている可能性もあります。
━━━クラスターの3分の1が故障した場合、交換するべきなのでしょうか?
交換をお勧めする場合が多いです。ただし、故障しても発電そのものが完全に停止するわけではないため、最終的にはお客様の判断によります。実際には、断線したパネルを交換される方が多い印象です。
━━━保証がある場合、費用はどうなりますか?
製品代については保証でカバーされるため費用はかかりません。しかし、交換に伴う工賃や手数料はお客様のご負担となる場合があります。
ジャンクションボックスと交換判断
━━━他には、どのような故障がありますか?
「ジャンクションボックス」の故障があります。これはパネルの裏側にある黒いボックスで、プラスとマイナスのケーブルを他のパネルと接続する部分です。中には基板やバイパスダイオードなどの回路があり、経年劣化や製品不良、物理的破損などで故障する場合があります。
故障すると、サーモカメラで撮影した際に、その部分だけが赤く表示される(過熱している)などの兆候が表れます。
━━━ジャンクションボックスが壊れると、電気が流れなくなるのでしょうか?
壊れ方によります。この中には基板があり、複雑な回路が組まれています。壊れ方によっては電気が全く流れなくなる場合もありますし、微弱に発電する場合もあります。
━━━ジャンクションボックスの故障はどのように発見するのですか?
メンテナンスの際にさまざまな測定を行います。サーモカメラの温度差や電圧・電流の計測結果で「ここが怪しい」という部分を絞り込み、故障の原因を見つけます。
━━━ジャンクションボックスが壊れた場合、すぐに交換するべきなのでしょうか?それともケースバイケースで判断されるのでしょうか?
こちらも壊れ方によります。
破損が激しく感電の恐れがあるなど、安全面の問題が大きいケースでは交換を強く推奨します。一方、わずかな発電低下で済むケースなどは、お客様の判断によるところが大きいです。
━━━お客様の意思決定次第という部分もあるのですね?
その通りです。お客様の所有物であるため、私たちはプロとして調査や診断を行い、「どこがどう壊れているか」「どれくらいのリスクや発電損失があるか」をご報告する立場です。安全性や発電量に大きな問題があれば強く交換をお勧めする場合もあります。
━━━判断に迷うケースはありますか?
あります。
自家消費型の設備と売電専用の設備では意思決定の判断軸が異なるため、本当にケースバイケースですね。
売電設備の場合、固定価格での買取期間が残りわずかであれば「修理のコストとのバランス」を考えます。一方、自家消費型の設備は、「発電所の規模」や「影響範囲」に基づいて判断されることが多いです。
━━━最終的には、状況に応じてお客様が判断されるということですね?
その通りです。どの故障も報告書としてお客様に提出し、「ここが壊れています。どのような影響があります」という形で情報提供を行っています。それをもとにお客様が最終判断されます。
━━━壊れたパネルを修理または交換する場合、費用はどのようにかかるのですか?
費用としては、パネル自体の製品代、交換工事の費用、そして取り外したパネルの廃棄処分にかかる費用が挙げられます。
━━━費用や出力の低下を考慮して、最終的にはお客様の価値観次第ということですね?
そうですね。たとえ発電量が66%に下がっていても、発電を続けることは可能です。一方で、そのままにすることで長期的には売電収入や自家消費量に影響が出るかもしれません。最終的には「どの程度の費用をかけて修理する価値を感じるか」という判断になります。
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