なぜ、太陽光パネルは斜めではなく水平に設置するのか?
A.水平設置の方が、お客様にコストメリットが働くためです。
要約
水平設置のコスト効率:太陽光パネルを水平に設置する場合、30度の角度で設置するのに比べて、架台や金具のコストが大幅に削減できます。具体的には、30度設置には1枚あたり9000円の架台が必要なのに対し、水平設置は数千円程度で済みます。発電効率は30度設置の95%となり、年間の電気料金差は約1150円。11年かけてこの差を回収するより、追加パネルを設置して効率を上げる方が早期の投資回収につながります。
斜め設置のデメリット:30度設置にはデメリットが多く含まれます。重量が増して屋根の耐荷重が課題となるほか、風の影響を受けやすく、強風時にパネルが吹き飛ばされるリスクがあります。また、施工費用も増大し、屋根の強度が十分でない場合はトラブルのリスクも高まります。これらの要因から、コスト面や安全性で水平設置が有利とされています。
条件による柔軟な対応の必要性:水平設置が推奨されるケースが多いものの、環境や屋根の状態によって最適な設置方法は変わります。例えば、北勾配の屋根や影を作る建物がある場合は、斜め設置が必要になることもあります。恒電社では現地調査を実施し、シミュレーションを基に最適な提案を行います。条件次第では、コストと効率のバランスを見極めた設置方法を選択することが重要です。
解説者

インタビュアー

なぜ、水平に設置するのか?
━━━なぜ太陽光パネルを斜めではなく水平に設置するのか、解説いただけますか?
施工管理者と営業としてのロジックが少し違う可能性がありますが、今回は施工管理者としての観点で説明します。
まず、太陽光パネルを2枚設置した場合をイメージしてください。
屋根の上に「30度の角度で斜めにパネルを設置した場合」と「水平に設置した場合」とでは、必要となる部材の内容や費用に違いが生じます。
斜めに設置する場合は、構造上の理由から金属製の架台が必要になります。たとえば、450Wのパネルを1枚取り付ける際、パネル本体が18,000円だとしても、斜め設置用の架台には1枚あたり約9,000円のコストがかかります。
一方、水平に設置する場合には、大きな架台は不要で、いくつかの押さえ金具だけで設置が可能です。押さえ金具は1個あたり650円程度で、数個使用するだけで済むため、部材コストを抑えることができます。
実際にパネルを2枚設置するケースで比較すると、斜め設置の場合は、パネル2枚で36,000円(18,000円×2枚)に加え、架台が18,000円(9,000円×2基)かかるため、合計で「約54,000円」になります。
一方、水平設置の場合は、パネル代36,000円に加え、押さえ金具代は最大でも5,200円(650円×8個)程度のため、合計は「約41,200円」に収まります。
このように、同じ2枚のパネルを設置する場合でも、設置方法によって部材費だけで「12,800円ほどの差」が出ることになります。

━━━ですが、太陽光パネルは30度ほど角度をつけると最も発電量が高いと聞いたことがあります。部材の費用が高くなったとしても、発電量が多い斜め設置の方が投資回収期間は短くなりませんか?
確かに、一般的にはパネルに30度ほどの傾斜をつけた方が発電効率は高くなります。
ただし、たとえば部材費の差額である12,800円を回収しようとした場合、斜め設置と水平設置の発電量の差だけでは、それに10年以上かかる可能性が高いです。というのも、両者の年間発電量の差は想像よりも小さいためです。
たとえば450Wのパネルを2枚(合計900W)設置する場合、30度の角度をつけた斜め設置では、年間約990kWhの発電が見込まれます。一方、水平設置ではこれが「約5%」下がるとされており、年間940kWh程度と推定されます。その差は年間で約50kWhです。
仮に電気料金を1kWhあたり23円とした場合、年間の差額は約1,150円にとどまります。
つまり、部材コストの差額である12,800円を発電差で回収するには、単純計算で「10年以上」かかるということになります。
━━━仮に水平設置によって発電量が5%低下したとしても、投資回収の観点からはお客様にとってお得になる可能性が高いということですね。
はい、まさにその点がポイントです。
架台を用いた斜め設置は、発電効率がやや上がる一方で、部材コストの回収に時間がかかるという側面があります。それであれば、架台を使わずに水平設置でコストを抑え、その分でパネルを1枚多く設置したほうが、全体の発電量が増え、結果として投資回収が早まる可能性があります。

たとえば、斜めに2枚取り付ける代わりに、水平で3枚設置した場合、発電量としては3枚分となるため、斜め設置よりも多くの電力を生み出すことができます。
水平設置で仮にパネルを1枚追加した場合、金具などの部材費としては約5,200円のコストがかかりますが、1枚のパネルによる発電量は年間でおよそ8,000〜10,000円分に相当します。つまり「部材費だけで見れば、5年程度で追加費用の回収が可能」という計算になります。
この違いこそが、今回ご説明したかった重要なポイントです。
斜めに設置するデメリット
━━━コスト面以外にも斜めに設置するデメリットはありますか?
アルミ架台を使用すると重量が増し、屋根への耐荷重が大きくなります。また、斜めに立てることで風の影響を受けやすく、北風など強い風が吹いた際にパネルが吹き飛ばされるリスクも高まります。さらに、屋根が十分に頑丈でない場合、トラブルのリスクが増加しますね。
━━━そもそも、30度の角度が最適という考えはどのように生まれたのでしょうか?
30度はおそらくNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)などが発表している研究データに基づくものです。その研究では、最も発電効率が高い角度が30度とされています。この角度での発電量を100%とした場合、平置きでは発電効率が5%から10%ほど低下するという計算が示されています。
━━━いつ頃から「水平置きの方が経済的である」と判断されたのでしょうか?以前は、過去に斜め設置することもあったのでしょうか?
斜めに設置することは以前もありましたし、お客様のニーズによっては、現在でも斜めに設置するケースがあります。例えば、1枚あたりの発電量を最大限効率的に得たいと考える方は、斜め設置を希望されることが多いです。
━━━斜めに設置する場合はどのような場合でしょうか?
パネルを斜めに設置する必要がある場合は、例えば周囲に影を作る建物があったり、屋根が北勾配になっている場合などが挙げられます。このような状況では、そのまま平置きにすると効率が著しく低下するため、斜め設置が選択されることがあります。
例えば、北勾配の屋根では反射光が後方の建物やエリアに影響を与える可能性があります。その場合、斜め設置にすることで効率を向上させ、反射の影響を軽減することが求められます。
総じて言えるのは、屋根や周辺環境に応じて角度は変わり得ますが、基本的には水平置きがコスト面でお客様にメリットをもたらす場合が多いということです。
恒電社としても、南向きまたは平らな屋根の場合には平置きを推奨しています。ただし、具体的な条件は多くの変数によって異なるため、現地調査を実施し、その結果に基づいてお客様に最適な設計を提案しています。
━━━最終的なコスト計算で、どちらの設置方法が経済的にメリットがあるかという視点で考えると、水平設置の方が間違いなく有利ということですね。ただ、経験上、1枚あたりの効率を重視されるお客様も一定数いらっしゃる、という認識でよろしいでしょうか?
その通りです。
現実には様々な要因が絡むため、“導入コスト”だけをみて「斜め設置が有利なのか、水平設置が有利なのか」を判断しているわけではありません。
例えば、今回の計算は真南向きのケースを想定していますが、屋根が東向きや西向きの場合は結果が異なります。また、屋根に勾配や傾斜がある場合、さらに計算が変わります。
加えて、屋根のスペースが狭く、多くのパネルを設置できない場合や、屋根が非常に広く電力需要が少ない場合など、条件によって最適解は変わります。
そのため、恒電社はお客様一社一社に対して細かいシミュレーションを行い、その工場や施設に最適な提案をするよう努めています。
これが個別対応が必要な理由です。
━━━最後に1つ質問です。これから自家消費型太陽光発電設備の導入をご検討されているお客様が、恒電社に問い合わせる前に、事前に確認しておくべきことは何かありますか?
特に事前準備は必要ありません。まずは恒電社にお気軽にお問い合わせ頂けますと幸いです。
お客様自身が屋根の状態や周囲の環境を正確に把握することは難しいため、恒電社の専門チームに現場を見せて頂き、シミュレーションを基に最適な設計をお任せいただくことが、最適な方法と考えます。
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