天候不良時や夜間には、太陽光パネルの発電量はどのように変化するのか?

A.太陽光発電は夜間は発電量が0になりますが、天候不良時の発電量は雨ではなく雲の厚さに依存して発電量が変わります。

要約

天候不良や夜間の影響を考慮した設計:
太陽光発電は夜間は発電量が0になりますが、天候不良時の発電量は雨ではなく雲の厚さに依存します。発電量の予測には、過去10~20年の地域ごとの日射量データを活用し、将来の天候変化を見越した堅実な設計が行われています。結果的に、当社のシミュレーションは保守的な計算を基にしており、実際の発電量が上振れするケースが多いです。

過積載による発電効率の向上:
曇りの日でも効率よく発電するために、標準的なパネル設置量を超える「過積載」を採用することがあります。例えば、パワコン100kWに対して150kWのパネルを設置することで、発電量のカーブを太らせ、曇りの日でも効率的に発電可能にします。しかし、過積載はイニシャルコストが上がるため、お客様の電力使用状況に合わせたシミュレーションを通じて最適なバランスを見つける必要があります。

設計時の柔軟性と条件の最適化:
太陽光パネルの設置には、一律の基準はなく、平日や土日、季節ごとの電力使用状況や屋根の物理的制約など、多くの要因を考慮します。設計では、最適な自家消費率や発電量を実現するため、レーダーチャートのように多角的な視点で最適なポイントを探し出します。この柔軟性あるアプローチにより、各お客様に合った効率的な発電システムが提供されています。

解説者

蛎崎 泰祐
施工管理職

蛎崎 泰祐

新卒からSIerとしてIT業界を経験する。2018年に恒電社へ参画してからは事業部を横断して活躍し、エネルギーマネジメント事業部の立ち上げに貢献。現在は施工管理職としてシステム設計から、工程・安全・現場管理を一貫して担当している。徹底したリスク管理と持ち前の柔らかい人柄で、社内外を繋げ動かすハブとして活躍中。

インタビュアー

原澤陽
合同会社HARAFUJI

原澤陽

合同会社HARAFUJI・COO。マーケティングを中心に、企業の戦略および戦術支援事業に従事。
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。

天候不良時や夜間の発電はどうなるのか?

━━━太陽光発電は、天候不良時や夜間にどのように発電量が変化するのでしょうか?

夜間は発電量がゼロになります。天候不良については、「雨が降っているかどうか」よりも、雲の厚さによって発電量が左右されるという表現がより正確です。

━━━年間でどれくらい雲の厚い日があるか、というのは予測は難しいと思いますがいかがでしょうか。

もちろん将来の天候を完璧に予測することはできません。

ただし、天気予報の精度も上がってきているのと、過去10年〜20年分の地域ごとの日射量データをもとに、信頼性の高いシミュレーションを行っています。よって年ごとのばらつきはあるものの、20年単位など長期で平均を取ると、大きな傾向の変動は見られていません。

━━━最近では平均気温が上昇しているようですが、気温の変化が太陽光発電に影響を与えることはありますか?

もちろん気温の上昇によって発電量が低下してしまう場合もありますが、発電量に対しては気温よりも「日射量」の方が影響が大きいです。

また、当社では過去1年分の日射量データや、20年間の平均値など複数のデータを組み合わせてシミュレーションしています。一つの数値に頼らず、現実的かつ保守的にシミュレーションを行うようにしています。

━━━恒電社はシミュレーションと乖離が少ないという声をよくいただきますが、それは設計のクオリティが高いからでしょうか?

設計自体のクオリティもありますが、それ以上に設計段階で使用するデータやソフトウェアが明確な根拠に基づいていることが大きいです。たとえば、過去の電気使用量や日射量の詳細なデータを分析し、それに基づいて自家消費率や余剰電力量などを丁寧にシミュレーションしています。

また、発電した電気を無駄なく使い切れるよう、実際の電気使用パターンも反映した設計にしています。そのため、よほどお客様の事業内容が大きく変わらない限り、シミュレーションと実績に大きな差が出ることはほとんどありません。

━━━固め(保守的)にシミュレーションしているということですね。

はい、かなり保守的な前提でシミュレーションを行っています。

一般的には、パネル1kWあたり年間約1,100kWh発電するとされていますが、当社ではあえてそれを下回る、年間900kWh台で計算しています。その結果、実際に設置後の発電量がシミュレーションを上回る(=お客様にとって良い意味での誤差)ケースが多くなっています。

━━━天候不良や夜間の発電量変化を見越した設計もされている、ということでしょうか。

その通りです。

たとえば、曇りの日でも一定の発電量を確保したいというニーズに対しては、「過積載」という設計手法を用いることがあります。

通常は、パワーコンディショナ(PCS)100kWに対して、太陽光パネルも100kW(等倍)を設置しますが、過積載では150kWなど、PCS容量を超える枚数のパネルを設置します。

これにより、発電カーブの山がふくらみ、曇天時でも安定した出力が得やすくなるというメリットがあります。

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具体的には、晴天の日には、過積載によって発電カーブが横方向に広がり、発電時間が長くなる傾向があります。また、曇りの日でも、過積載によってパワーコンディショナ(PCS)が発電を開始するための起動電圧に早く到達するため、等倍設計よりも早い時間帯から発電を始めることが可能になります。

その結果、曇天時でも等倍構成より多くの電力を発電できるというメリットがあります。

ただし、過積載にすればするほど必ず良いというわけではありません。当然ながらパネルを多く載せればその分コストも増えるため、費用対効果のバランスが重要です。

恒電社では、お客様の電力使用状況や屋根の面積、契約電力などを踏まえた上で、シミュレーションを通じて最適な設計構成をご提案しています。

━━━過積載について、さまざまなお客様の電気の使い方によって変わるとおっしゃいましたが、どのくらい過積載するかの基準のようなものはあるのでしょうか?

正直なところ、「これが絶対の基準です」と言えるような明確な数字はありません。

むしろ、レーダーチャートのように、複数の要素のバランスを見ながら、最適なポイントを探していくというイメージが近いと思います。

たとえば、平日の日中に常時300kWの電力を使用しているからといって、必ずしも太陽光パネルを300kW分設置するのが最適とは限りません。土日にほとんど電力を使っていなかったり、季節によって使用量にばらつきがあるような場合は、発電した電気が余ってしまうリスクが出てきます。

そのため、年間を通じて自家消費率をできるだけ高めることを考えると、少し設置容量を抑えるほうがよいケースもあります。一方で、そもそもお客様の屋根に300kW分のパネルを載せられるかどうかという物理的な制約も考慮する必要があります。

このように、電力使用のパターン、屋根の面積、稼働日、契約電力など、さまざまな条件を総合的に判断しながら、お客様にとって最もメリットのある構成を見つけ出すのが私たちの役割です。

━━━一過積載をした場合のデメリットは何でしょうか?

イニシャルコストが上がることが挙げられます。

「たくさん設置すればその分発電も増える」と考えたくなりますが、その分設備費用が増えますので、費用対効果のバランスを丁寧に見極める必要があります。

そのため、恒電社ではシミュレーションを活用しながら、お客様の使用状況に合わせた最適な設計バランスをご提案しています。

この記事を書いた人

岩見啓明
株式会社恒電社

岩見啓明

クリエイター。恒電社では動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告と幅広く施策を担当。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2025年に第二種電気工事士資格を取得。

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