太陽光パネルの設置枚数は、どのような要件や計算方法で決定されるのか?

A. 屋根の広さや影の影響、電力消費のパターンに加え、自家消費率とコストのバランスなど、多角的な要素を総合的に考慮して決まります。

要約

太陽光パネルの最適な枚数決定のプロセス:
パネルの枚数は、屋根のスペースを最大限利用するシミュレーションを実施し、お客様の電気使用データに基づいて自家消費率を計算することで決定します。まずは自家消費率を高めることを目指しますが、100%を追求しすぎるとパネル容量が小さくなり、結果的に電力会社からの購入量を十分に削減できなくなる場合があります。そのため、最終的には自家消費率がおよそ90%台になるよう調整されることが多いです。設計者の経験や感覚も大切で、季節や曜日ごとの電力使用パターンを考慮しながら検討を進めています。

お客様のニーズに応じた柔軟な対応:
お客様からは「もっとパネルを増やしたい」という要望が多く見られますが、屋根の物理的な制約や過剰設置による効率低下を考慮し、プロジェクトごとに適切な回答が求められます。設置後の電力消費パターンや費用対効果を考えた上で、最適なシステム設計を提案することが重要です。

現場調査段階での調整と変更:
パネル枚数は大きく変更されませんが、レイアウトや設置場所の変更は発生します。たとえば、パワーコンディショナーの設置場所がメンテナンス性を考慮して変更された場合などは、これに伴いケーブルの長さなどが調整されます。

解説者

蛎崎 泰祐
施工管理職

蛎崎 泰祐

新卒からSIerとしてIT業界を経験する。2018年に恒電社へ参画してからは事業部を横断して活躍し、エネルギーマネジメント事業部の立ち上げに貢献。現在は施工管理職としてシステム設計から、工程・安全・現場管理を一貫して担当している。徹底したリスク管理と持ち前の柔らかい人柄で、社内外を繋げ動かすハブとして活躍中。

インタビュアー

原澤陽
合同会社HARAFUJI

原澤陽

合同会社HARAFUJI・COO。マーケティングを中心に、企業の戦略および戦術支援事業に従事。
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。

太陽光パネルの設置枚数は、どのような要件や計算式で決定されるのか?

━━━太陽光パネルの枚数は、どのようなデータや要因、条件をもとに決定されているのでしょうか?

枚数を決めるプロセスにおいては、まず、お客様の屋根にできる限り多くのパネルを敷くシミュレーションを行います。屋根にどれだけの枚数を設置できるかを把握した上で、お客様の電気使用量や30分単位の電力消費データを当てはめ、シミュレーションを行い、自家消費率を算出します。

例えば、自家消費率が50%と低ければ「こんなに多くのパネルは不要」という結論になり、パネル枚数を減らして再度シミュレーションを行います。このプロセスを繰り返し、最適なポイント、つまり自家消費率が100%に近いところを見つけるイメージです。

ただし、自家消費率を100%に近づけようとシステム容量を小さくしすぎると、発電量自体が十分でなくなり、結果的に電力会社から買う電気の削減率が大きくならないことがあります。そこで最終的には、発電量と自家消費率のバランスを考慮し、90%台の自家消費率となるようなパネル枚数で確定することが多いです。

設計プロセスでは、設計者の“感覚”も重要な要素となります。たとえば、「この会社は365日電気を使っているが、土日は電力使用量が少ない」「冷蔵庫のような常時稼働する機器があるかどうか」などの条件を考慮しながら進めています。

発電シミュレーションのイメージ
発電シミュレーションのイメージ

━━━最適なポイントを見つける際には、設計者の感覚も重要になってくるのですね。

そう考えています。まずは感覚的に最適なポイントを探し、最終的にはシミュレーション結果を見て決定していきます。

たとえば、平日の自家消費率が100%近くになっている場合は「発電した電力をすべて使い切っている理想的な状態」です。しかし、土日になると電力使用量が少ないため、発電した電気の一部が余ってしまい、自家消費率が100%を下回るというケースがあります。

その「余り」が気になるからといってパネルの枚数を減らしてしまうと、平日の需要をカバーできる発電量(=発電の山)も低くなってしまうのです。結果として、「平日はもっと発電してほしかったのに」ということにもなりかねません。

そのため、平日と土日のバランスをどう取るかが非常に重要で、どちらを優先すべきかは、最終的にはお客様の事業内容や運用スタイルによって変わる、いわゆるケースバイケースの判断になります。

━━━蛎崎さんの視点からは、すべて使い切れる方が良いのか、それとも発電量が少し余っても十分にカバーできる方が良いのかでいうと、どちらが良いのでしょうか?

これについては「どちらが良い」と一概に言うのは難しいです。

お客様によって電力の使い方が大きく異なるためです。たとえば、「電力使用に大きなピーク(山)があるお客様」と、「比較的均一に電力を使うお客様」では、契約されている電力料金の仕組み(基本料金や従量料金)も違ってきます。

ですので、私たちとしては「どちらかを選ぶ」よりも、お客様の電気の使い方や料金体系に合わせた最適な削減方法を提案することが最も大切だと考えています。

この点は、お客様にもご説明が少し難しい部分ではあるのですが、非常に重要なポイントだと思っています。

━━━太陽光パネルの枚数が増えれば発電量は増えますが、設置コストも上がりますよね。

そうですね。

たとえば、あるお客様では、工場全体の電力使用量が非常に多いため、屋根いっぱいに太陽光パネルを設置しても、それだけでは電力をすべて賄いきれないというケースがありました。つまり、屋根の物理的な制約によって、設置できる容量には限界があります。

一方で、電力使用量がそれほど多くないお客様の場合は、太陽光パネルを過剰に設置すると、発電した電力を使いきれずに余ってしまう可能性があります。その場合、自家消費率が下がってしまい、削減メリットが想定よりも小さくなることもあります。

このように、「屋根の広さ」と「電力使用量」のバランスを見ながら、最適な容量を見極めることが非常に重要です。設計時には、お客様の使用状況に合わせて最大限のメリットを得られる“ちょうどよい規模感”を見つけるようにしています。

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━━━初回提案での設計内容が、現場調査を踏まえて大きく変更されることはありますか?

パネルの枚数自体が大きく変わることは基本的にありません。ただし、レイアウト(配置)の変更や部材の設置要件などが発生することはあります。

たとえば、メンテナンス性を考慮して、想定していた部材や設置場所を変更することがあります。具体例として、パワーコンディショナ(PCS)の設置場所について、初期段階では「この辺りに設置する想定です」とご提案していたものの、詳細設計や現地確認の段階で別の位置に変更するケースもあります。

また設置場所が変われば、当然配線の長さやルートも変わり、資材や工事手順に影響が出ます。細かなものも含めてこのような調整は、現場段階でほぼ毎回発生していると言ってもよいかもしれません。

━━━実際にご提案した際に、お客様から「枚数を増やしたい」あるいは「減らしたい」といった要望が出ることはありますか?

はい、ご提案後に「せっかくならもっとパネルを載せたい」という前向きなご要望をいただくことは少なくありません。特に、「どうせやるなら一気にやってしまいたい」というお考えを持たれるお客様が多い印象です。

ただし、パネルを増やしすぎると、発電量が電力使用量を上回ってしまい、効率が下がる可能性があるため注意が必要です。また、そもそも屋根の面積が足りないという物理的な制約がある場合もあります。

そのため、こういったご要望へのお応えは、「お客様ごと・プロジェクトごとに異なる判断」が必要になります。私たちとしては、シミュレーションを通じて、設備容量と実際の電力使用状況との最適なバランスを見極めながら、ご提案させていただいています。

この記事を書いた人

岩見啓明
株式会社恒電社

岩見啓明

クリエイター。恒電社では動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告と幅広く施策を担当。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2025年に第二種電気工事士資格を取得。

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