【航空業界編】SDGs・脱炭素の取り組みまとめ | 結局、何をしていけばいいのか?
更新日:2023年6月20日
2050年までにカーボンニュートラルの達成を目指す日本政府。
各企業では、持続可能な社会の実現を目指して温室効果ガスの排出削減の行動が求められています。
今回は、“空港業界”の取り組みに焦点を当て、SGDs・脱炭素の観点から具体的な取り組みを調査しました。
目次
日本の空港業界における現状
国土交通省航空局は2021年6月、空港のカーボンニュートラルを2030年までに達成するための具体的な取り組みとして、空港敷地内および空港周辺10キロ圏内の未利用国有地における太陽光発電導入を促進する方針を公表。
現状、空港施設内の照明・空調・航空灯火・GSE車両からのCO2排出量は年間約89万トンで、そのうち、照明・空調が78万トン、航空灯火は2万トン、GSE車両が9万トンとなっています。
航空局は、日本全国の空港内で合計約1万5000ヘクタール(施設屋上部分などに約3700ヘクタール、空港周辺未利用国有地に約1万1300ヘクタール)の太陽光発電の設置が可能な場所があり、2300ヘクタールに太陽光パネルを追加設置することで、年間で100万トンのCO2排出削減効果が見込まれると試算しました。
さらに航空機の駐機中や、地上走行によって年間169万トンものCO2が排出されていることからも、様々なCO2削減対策の導入・検討を進めています。
空港に太陽光設置で2030年カーボンニュートラル – 旅行業界・航空業界 最新情報 − 航空新聞社 (jwing.net)
では、空港業界全体として「持続可能な社会のために」どのような取り組みをしていく必要があるのでしょうか。
今回はニュージーランドの空港が「持続可能な社会」を目指すべく行っている、様々な取り組みについてご紹介します。
【事例】オークランド空港
ニュージーランド北部に位置し、1966年に開港されて以来、持続可能な社会に向けた取り組みを積極的に行っているオークランド空港。
特に注目すべきは、“周辺地域”との連携を重視した取り組みで、厳格な目標管理と報告を実施している点です。
オークランド空港の取り組みを3つの観点に分けてご紹介します。
1. そもそもなぜ、SGDs・脱炭素に取り組むのか?
2. SGDs・脱炭素に対しどのような取り組みをしているのか?
3. SDGs・脱炭素に向けて何を提供しているのか?
WHY?そもそもなぜ、SGDs・脱炭素に取り組むのか?
SDGs・脱炭素に取り組む目的として、事業、ステークホルダー(株主/ パートナー/ 顧客)、そしてニュージーランドに価値を創造することを掲げています。
また、オークランド、そして従業員のために価値を創造するとも明言しており、“周辺地域”との関わりが彼らの大きな特徴ともいえるでしょう。
未来の世代に価値を創造し、地球を守ることを目指すオークランド空港。
具体的にどのような取り組みを行っているのか、続いてご紹介していきます。
HOW?:SGDs・脱炭素に対しどのような取り組みをしているのか?
01教育
- 1988年より、地元の小中学生への支援を実施。いじめ問題への対処、栄養価の高い食べ物を支給するなど、教育支援を実施
- 学生の文化的取り組みを評価する表彰制度の導入
- 学生が舞台芸術を体験できるよう、芸術祭への支援を実施
- 若者が貴重な水について、その安全性に関することを学べるイベン トセンターへの支援を実施
02キャリア
- 「家の近くで安定した仕事につく」ことを重要視
- そこで、空港の仕事およびスキルを身につけられる教育機関 「Ara」を設置
- Araに参加するほとんどは地元のサウスオークランド出身であり、 Araを介して雇用を生成
- 2017年には5つの高校から68人の制度が就業体験プログラムに参加
03環境5/1エネルギーの管理
- ターミナルでの天然ガス使用を段階的に廃止
- 企業で使用する車両をEVに移行
- 地球温暖化係数が可能な限り低い冷媒を使用
- 100%再生可能エネルギーの使用
- 温室効果ガス排出量の可視化
- 燃料消費削減を目的とした航空ルートの最短距離化、低炭素グリッ ド電力の供給など、空港に関与するパートナーへのサポート
03環境5/2:廃棄物の管理
- ターミナルの小売テナントと協力し、持続可能性への取り組み改善を実施
- 使い捨てアイテムへの依存を減らし、リサイクル率を向上することで廃棄物の排除を実施
- 食品や飲料の販売店では使い捨てのパッケージや調理器具を提供する代わりに、食器やカトラリーを再利用できるように改善
- 専門機関に依頼し、検疫廃棄物の蒸気殺菌を実施
03環境3/5:節水
- 2030年までに、廃棄物を2019年時と比較して20%削減する目標を設定
- 使用中の水効率をサポートすることで、再生水の生成を実施
03環境5/4:地域の生物多様性の管理
- 鳥の動きと行動を監視
- 草を低く刈ることで、鳥がねぐらや採餌をしないように管理し、虫やゴミなどの食糧源を管理
- 滑走路付近にあるマングローブを撤去
- 旗や風船を使って鳥を怖がらせ、航空業を継続するための駆除ではない安全な方法を実施
- ねぐらなど、鳥たちにとっての環境支援
- 空港地区の造園にも従事
- 地域の環境と調和する建物、風景、看板の設計
- 可能な限り、在来植物を使用
- 空港利用者むけのレクリエーションエリアの提供
- 空港を清潔に保つ施策実施
03環境5/5:Tiaki Promise
- Tiakiとは、人と場所の世話をすることを意味する
- Tiaki Promiseでは、現在および将来の世代のためにニュージーラン ドをケアする取り組みを実施
- 自然を守る、ニュージーランドを清潔に保つ、安全運転、気候変動への準備、人同士のリスペクト、これら5つの指針を掲げている
04航空機の騒音
- より静かな飛行機の開発
- 住宅地で発生する騒音が少ない、飛行経路の設計
- 空港の近くに新しい住宅地、学校ができることを回避
- 誰もが現在の飛行情報を見れるよう、オンライン上で飛行経路の情報を問い合わせられるような仕組み作り
- 空港の近くにある家、幼稚園、学校への騒音軽減支援
- 騒音の影響を受けている地域の隣人の健康と福祉サポート
05地域
- 地元のマオリとの関係構築に従事
- 30年間の開発計画でTangata whenua(=土地の人々を示す意味)と協力。これらのパートナーシップに加えて、毎年オークランドに歓迎する新しい航空会社のためのポーフィリ(マオリの歓迎式典)を含む、地元のマオリが提供する文化的アドバイスやサービスに従事
- マオリ語によるターミナルでマオリ文化グループによるパフォーマンスを主催
06コミュニティへの寄付と募金
- 毎年、旅行者によるターミナル内での不要な通貨を地域社会の慈善団体への助成金として配布
- 12に渡る慈善団体との連携を図り、これらの地元慈善団体は教育、雇用、環境保護の支援活動に寄与
- コミュニティトラスト助成金として、近隣の騒音影響があるコミュ ニティに対して助成金を配布
- コミュニティトラスト助成金は、これまでコミュニティのために約 400万ドル以上の助成金を配布
07多様性と包括性
- 「多様性と包括性」を掲げる背景に、事業が様々な人に支援されて いる事実があり、また環境・文化を考慮したコミットメントを心がけている
- 具体的な施策として、2030年までにニュージーランドの民族性を反映した労働力の構成。また役員、リーダー、シニアリーダーのジェ ンダーバランス、またマオリ/パシフィカ民族の人々のリーダー比率の重視
08スマートな設計と建設
- 道路および新しい交通システムのアップグレード
- 国際線ターミナルに接続された新しい国内ハブの開発
- 新しい交通ハブの開発
- 既存の国内線ターミナルの継続的なアップグレード
- アウトレットセンターの建設
09経済的貢献
- オークランド空港は地域への経済的および社会的幸福においても寄与
- 2013年、空港とその近隣の企業では33,000人以上の雇用、近隣地 域の世帯収入を19億ドル押し上げるのに寄与
- ニュージーランドの観光産業にも貢献。ニュージーランドにおいて 観光業は2番目に大きな産業であり、国における雇用の9%占める。 2013年の輸出収入は98億ドルに上る
- オークランド空港はニュージーランドで2番目に大きな貨物港であり、国際貿易において重要な役割を果たしている。毎年130億ドル 相当の23万トン以上の航空貨物がオークランド空港を通過
10倫理的なビジネス
- 倫理と行動規範:倫理および行動規範の方針を明確に定め、行動として徹底
- 人権:国連が定めている条約に則り、人権の保護を支持
- 持続可能な調達:全てのステークホルダーに長期的な価値を生み出すため、サプライヤー行動規範を明示
WHAT?SDGs・脱炭素に向けて何を提供しているのでしょうか?
オークランド空港では、持続可能に関するページにおいて、雇用、CO2排出量、コミュニティなどの施策について明確な目標を示しています。
多くの企業が「SDGsに取り組んでいる」と訴求する中でも、目標を前面に提示している事例は多くなく、このような取り組みは、消費者や投資家からの信頼を獲得する上で有益であると考えられます。
それでは、自社が持続可能な社会に向けて取り組む場合、何から始めたら良いのでしょうか?
弊社では、ご縁があり、空港業界での自家消費型太陽光設備を導入させていただいた実績がございます。
以下に、その導入事例をご紹介させていただきます。
MRO Japan株式会社
【導入事例】航空業界のMRO Japan株式会社が自家消費型太陽光発電を導入
おきなわSDGsパートナーに登録されている、MRO Japan株式会社様は、グリーンエネルギー活用の観点で自家消費型太陽光発電の導入を検討し、弊社にお声がけ頂きました。
設計・施工を進めていくなかで、屋根の強度や管制塔の問題など、技術面での課題が多く存在しました。また、海に近いことによる塩害や台風などの環境要因も十分に考慮する必要がありました。
空港施設内(特別管理区域内)の建物であるため、万が一事故が起きれば大惨事となる可能性もあります。
沖縄県の風速を加味して設計・施工、屋根の荷重計算を行ったほか、太陽光パネルの反射光が高さ88mの航空管制塔に影響しないか、反射光調査も実施いたしました。
MRO Japan株式会社様について、さらに詳細の導入事例はこちらよりご覧ください。
最後に
2030年までにカーボンニュートラル実現を目指す日本の空港業界。
ニュージーランドのオークランド空港では、再生可能エネルギーの使用だけでなく、生物多様性、雇用、地域経済、教育など、地域と環境に根ざした「SGDs・脱炭素」の取り組みにも力が注がれています。
持続可能な社会の実現のために乗り越えるべき課題が多く、様々な試みに挑戦し続けることが必要不可欠な空港業界。
恒電社では、日頃から様々な視点でSGDsや脱炭素社会について発信しております。
その他にも、様々な自家消費型太陽光発電の導入事例もご紹介しておりますので、ぜひご覧くださいませ。
参考文献