【動画抜粋】カーボンニュートラル、実現可能なのか?
更新日:2023年8月21日
2030年には温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年に完全なカーボンニュートラルを実現することを宣言している日本。
現在、個人・企業・政府がその実現に向けて様々な取り組みを展開しています。
しかし、“本当”にカーボンニュートラルは達成できるのでしょうか?
本稿では、株式会社エネリード代表取締役である狩野晶彦氏の解説動画より「カーボンニュートラルに向けて、“今、本当”に必要なことは何か?」をテーマに、その実態をご紹介します。
目次
“カーボンニュートラル”は、逃げ言葉?
そもそも、カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることを意味する概念です。
どうしても避けては通れない排出量については、その分を「吸収」または「除去」することにより、差し引きで温室効果ガス排出量ゼロを実現することをゴールとしています。
カーボンニュートラルの実現には相当な努力が必要
突然ですが、みなさんは27年後の未来を鮮明に描けますでしょうか?
前述した通り、日本政府は、2030年には温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年に完全なカーボンニュートラルを実現することを目標に定めています。
今(本稿執筆時が2023年)から27年後には完全なカーボンニュートラルが実現できていなければいけないということです。
しかし、本当に実現可能なのでしょうか?
カーボンニュートラルの達成に関して、電力会社・大手企業・特約代理店等に向けて年間100 回以上の講演を行っている株式会社エネリードの代表、狩野氏は下記のように述べています。
27年後の姿だからといって、「カーボンニュートラル」という体の良い逃げ言葉を使ってはいけないと思います。
つまり「プラスマイナス(差し引き)でゼロになれば良いよね」「排出した分は吸収・除去すれば良いよね」ではなく、温室効果ガス排出量を“減らす”ことに真摯に向き合わないといけない時に今来ています。
特に電力部門においては、まずは「再生可能エネルギーを増やす」こと。
2030年温室効果ガス46%削減(2013年度比)は”本当”に達成できるのか?
そして「火力発電への依存度を減らす」ことを数字的根拠を持って、民も官も、そして私たち個人も企業もやらなきゃいけない時期に、今まさに来ています。
“脱炭素”。
漢字の意味の通り、まずは電力部門全体で「CO2を減らす努力」「CO2を排出しない電源を増やす努力」が重要であると、狩野氏は説きます。
それでは具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか?
カーボンニュートラルに向けて“今、本当に”必要なことは何か?
最先端技術が2030年までに間に合うかと言われると、正直…厳しい。
上の図は、カーボンニュートラル達成目標時期の2050年までに電力部門において「どのような技術が有効となりうるのか?」を時系列で示したものです。
カーボンニュートラルに向けたロードマップはあるものの、専門家からの視点では現実的に間に合うかどうかは、正直、厳しいとの見解があるのも事実です。
2050年のカーボンニュートラルを具体的にどうやって達成していくのか。
一つの区切りとされているのは「2030年」。2050年カーボンニュートラルを達成するためには、最先端技術(例:水素アンモニア、地熱、小中水力発電)が必要となりますし、これらの技術は、2050年に向けて実用化されてくると思います。
ですが、2030年の目標「温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減」、もしくは第6次エネルギー基本計画に、これらの技術が間に合うのかというとちょっと厳しいかもしれません。
電源構成比の推移から見える「脱炭素」の難易度は?
狩野氏は、そこで重要となるのが「風力発電」と「太陽光発電」だと述べます。
なぜ、風力発電と太陽光発電が重要なのか?
2030年の目標に向けて、温室効果ガスをどのように減らすのか?
一番手っ取り早いのが、火力発電の比率を減らして、再生可能エネルギーの比率を増やすことです。では、現在、再生可能エネルギーとして普及している技術は何か?
それは「風力発電」と「太陽光発電」です。この二本柱をまずは徹底的に育てること、導入を加速化させること。
電源構成比の推移から見える「脱炭素」の難易度は?
これが、カーボンニュートラルに向けた1つのキーポイントであると思います。
まだ明確に見えない法律改正や最先端技術に期待をする前に、まずは現在の技術である「風力発電」と「太陽光発電」を導入していくことが重要だと、狩野氏は説きます。
その根拠として、2010年〜2020年の10年間における日本の電源構成比の推移を見てみましょう。
2010年と2020年を比較してみると、「風力発電」と「太陽光発電」の普及速度が他の電源よりも速いことが分かります。
バイオマス発電なども少しづつ普及が進んでおりますが、バイオマス資源がそれぞれの地域に分散しており、発電所が小規模分散型の設備になりがちであるため、コストがかかるという課題があります。
バイオマス発電
参照:経済産業省資源エネルギー庁「バイオマス発電」
「バイオマス」とは、動植物などから生まれた生物資源の総称。
「バイオマス発電」では、この生物資源を「直接燃焼」したり「ガス化」するなどして発電する。
また原子力発電については、新設・再稼働に向けて未だ多くの課題を抱えており、2030年の目標に向けて有効な電源になりうるかと言われると疑問が残ります。
これらの点からも、直近に迫る2030年に向けて、現実的かつ有効な再エネ電源となりうるのは「風力発電」と「太陽光発電」であるという見解に合点がいきます。
特に太陽光発電においては、昨今、一般家庭でも導入されるケースが増えてきた他、 2022年12月には東京都で太陽光パネルの設置義務化が正式に決定しました。
東京都の取り組みの背景にも「今スピード感を持って導入ができるのは太陽光発電」という考えがあることが伺えます。
そして昨今の電気料金の高騰も相まって、太陽光発電の中でも法人企業において注目を浴びているのが“自家消費型太陽光発電”です。
最後に自家消費型太陽光発電について、簡単に解説していきます。
自家消費型太陽光発電とは?
自家消費型太陽光発電とは、屋根や敷地内に太陽光発電システムを設置し、発電した電気を建物の中で使用する設備です。
電力会社から購入する電気料金の削減など、様々な導入メリットがあります。キーワードは「高い電気を購入するより、安くてクリーンな電気を自家発電して使用する」です。
※自家消費型太陽光発電について詳しく知りたい方はこちら。
メリットとしては大きく4つ。
- 電気料金の削減
- 節税対策・補助金制度の活用
- 遮熱効果
- 脱炭素経営
埼玉県企業の導入事例
埼玉県蓮田市|株式会社岩崎食品工業様 – 食品メーカー
1954年創業。埼玉の食品メーカー株式会社岩崎食品工業は2020年10月より、太陽光発電による電気供給を開始しました。
電気代削減、遮熱による職場環境改善、そして持続可能な社会への貢献。
今では再生可能エネルギーだけで作る岩崎食品の麺は、地元に長く愛されてきました。
神田氏は、脱炭素への取り組みを下記のように考えられています。
━━━昨今の気候変動から“持続可能”の言葉に注目が集まっています。御社は実際に再生可能エネルギーのみで工場運用をやられてみて、思うことはありますか?
自社が世界を動かしているわけではないですが、「小さな一歩がつながっていく」という意識が重要だと思います。
【導入事例】持続可能な“社会と会社”を創るために経営者がすべきこと。
気候変動はあまりにも大きなテーマなので、弊社だけでは解決できません。 それでも、まずは自分で一歩進むことが大事です。
環境の話と逸れるかもしれませんが、私は“持続可能”という言葉は会社にとっても同じではないかと思っています。
昭和26年創業の岩崎食品を私が88歳の米寿の歳まで続けるとなると、100年目の会社になります。100年企業を持続させるのは大変です。昔と違って、今は企業の寿命が短いですからね。
厳しい時代の中でも会社を持続させるために利益を出す。自分たちの足で生きれる状態にする。 そのためには、時に大きな設備投資に踏み切らないといけません。もちろん多額のお金がかかります。でも、覚悟ができていれば怖くないです。
私には良いものを作っている自信がある。きちんと自分の商売をしていれば、腹を決めて投資ができます。
私が定年になって次に引き継いだら終わり、ではありません。引き継がれた方にとってはその時がスタートです。 社員が不安なく働くために腹を決めて投資しなければ、会社を持続可能な状態にすることはできません。
※インタビュー詳細は、こちらをご覧ください。
埼玉県北足立郡伊奈町|株式会社昭和技研工業様 – ジョイントメーカー
1966年創業のジョイントトップメーカーの株式会社昭和技研工業は、2011年に最初の太陽光発電システムを導入。
そして、自社の駐車場に自家消費型太陽光発電パネル付きカーポートを追加で導入されました。
代表である岩井氏は、脱炭素への取り組みをこのように説きます。
━━━ものづくり全体を見渡した時、脱炭素に関する現状の進度はどれくらいでしょうか?
難しい質問ですね。先ほど申し上げましたが、まずはできるところをコツコツと積み上げていくのが正しいのかなと。
答えになっていないかもしれませんが「とにかく70点でもいいから、やろうよ」と。できることをやろう。
今、世の中の流れは「100点じゃなく120点とれ」と言っているように見えます。そうすると、やる気が失う人が出てきてしまう。それは違うなと。
弊社も太陽光パネルを載せていますが、全体消費電力の20%ほどしかまかなえていません。では、残りの80%はどうするのか?…難しい問題ですが、それでもできることをやり続けます。━━━「70点でいいからやる」弊社でも取り入れるべき考え方だと思います。御社にて創業以来、重要視されている考え方はありますか?
一貫して大事にしてきたのは、”ものづくり”への意識です。
【導入事例】「70点でもいいから、やろうよ。」”ものづくり”における脱炭素の現状
創業者の祖父は戦争に行き、彼は機械いじりが好きだったため戦地で「お前は生きて帰ってこい。生きて帰らないと戦車を直せる人がいなくなる。」と言われたそうです。
戦後、せっかくの命だから日本の復興のために残された命を大事にしろってことだと思います。ものづくりを元に商売を始め、それが今につながっています。
なので、ものづくりの大切さみたいなものを将来に伝えていきたい気持ちは先代にもあっただろうし、私自身にもある。
ものづくりは人の採用が重要です。
私はキャリアとして経理や総務、人材採用に従事してきました。モチベーションが高く、スキルがあって、やる気がある人。そういう人をいかに採用して、活躍できる職場を作れるかが私の仕事です。
私は開発ができない、ものづくりもできない、お客様を拡大する営業もできない。私としては、他の人にやってもらわないといけません。なので、人を採用したい気持ちは強いです。
“もの”はなんだかんだで人が作っている。機械が作る部分もありますが、結局は人が作っています。
やはり最後は人です。働きやすい環境を作りたい。
※インタビューの詳細は、こちらをご覧ください。
参考
今回、カーボンニュートラルを新たな切り口で考察してくださったのは、電力会社や大手企業、特約代理店等に向けて年間100回以上の講演を行っている株式会社エネリードの代表取締役、狩野晶彦氏です。
本日の内容を詳しく解説した動画は、こちらよりご覧くださいませ。
30年間、埼玉で極めた電気設備技術を活かした自家消費型太陽光発電の専門家である株式会社恒電社では、電気に関する様々な情報提供を行っております。
是非、各社の導入事例や、コラムなどもお読みいただければ幸いです。
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