導入事例 株式会社十万石ふくさや

【導入事例】株式会社十万石ふくさや様|埼玉県を代表する和菓子メーカーが自社工場に自家消費型太陽光発電を導入。期待するのは「遮熱効果」による製造現場の環境改善?

埼玉県行田市に本社を置く老舗和菓子メーカー株式会社十万石ふくさや様は、2024年3月に自社工場に自家消費型太陽光発電を導入しました。

創業から70年以上にわたり、変わらぬ味と品質で地元から愛され続ける「十万石まんじゅう」は、原材料へのこだわりと伝統的な製法が生み出す味わいが特徴です。

伝統を守りながらも、時代の変化に対応し、新たな挑戦を続ける十万石ふくさや。

何を変え、何を変えずに事業を続けるか。技術を守り、品質を維持し続けることはブランドの生命線であり、企業にとって大きなテーマである一方、時代に合わせて変化していく難しさもあります。

「素材と製法へのこだわり、美味しさの追求という伝統的な哲学を守りつつ、時代に合わせて変化していく。その両立は容易ではありません。」

そう語るのは、代表取締役社長 横田 康介様。

埼玉県を代表する企業としての考えや想い。そして自家消費型太陽光発電設備の導入に至った背景、またEPC業者を選定する上で考えたこと。

そして、今後企業としてどのような方針で経営していくのかなど、未来についてのお話もお伺いしました。

埼玉銘菓「十万石まんじゅう」

━━━御社の事業について教えてください。

株式会社十万石ふくさやは、1952年に埼玉県行田市で創業した和菓子メーカーです。

「十万石まんじゅう」は、創業時の屋号「福茶屋(ふくさや)」の開店と同時に生まれました。終戦後、砂糖の流通が解禁されたことを受け、和菓子の製造・販売を始めたのが「十万石ふくさや」の原点です。

江戸時代、行田市には忍藩(おしはん)という藩があり、その石高が10万石でした。『十万石』という名前には、この地の歴史と、「行田名物にしたい」という先代の思いが込められています。

主力商品の「十万石まんじゅう」は、創業時から、製法と原材料への変わらぬこだわりを持ち続けることで、美味しさを守っています。

テレビ埼玉の開局以来流れている「うまい、うますぎる」というテレビCMをきっかけに、埼玉県民の方々には幅広く知っていただけていると思います。

伝統的な「素材」と「製法」が選ばれる理由

━━━「十万石まんじゅう」へのこだわりについて、詳しく教えていただけますか?

まんじゅうは和菓子の基本形であり、シンプルだからこそ、誤魔化しが効かないのです。

本当に美味しいまんじゅうを作るには、まず確かな品質の「素材」を使うことと、選び抜いた素材の味を最大限に引き出す「製法」が大事だと信じています。

「十万石まんじゅう」の味を支えているのは、厳選された国産素材です。つくね芋は気候風土を厳しく選定した産地産、米は新潟県産のコシヒカリ、小豆は北海道十勝産と、各地の一級品のみを使用しています。

また、つくね芋は毎朝すりおろし、皮の生地には米粉を使用することで、独特のもちもち食感を生み出しています。

原材料の選定から製造工程に至るまで、細部に徹底的にこだわる姿勢が、長年お客様からご評価いただけている理由だと考えています。

埼玉県を中心に店舗展開。理由は「品質」と「お客様第一主義」へのこだわり

━━━ありがとうございます。御社のこれまでの歩みについてもお聞きしたいです。

埼玉県を中心に36店舗を展開し、創業以来、地域密着店舗型の販売を行ってきました。

先代の『出来たての味を楽しんでいただきたい』という思いを受け継いでいるのです。だからこそ、お客様に一番おいしい状態で召し上がっていただけるよう、店舗は埼玉県内を中心に展開しています。

希少価値の高い原材料を使い、賞味期限が5〜6日と短い「十万石まんじゅう」を、常に最高の状態で提供するには、物流の課題もクリアしなければいけません。「味」「品質」「鮮度」を追求した結果が、今の埼玉県を中心とした店舗販売という判断につながっています。

一方、時代に合わせて変化している部分もあります。

創業当初は駅前の商店街に店舗を構えていましたが、車社会の進展に合わせて、郊外の駐車場併設店舗へと立地戦略を変更しました。

また近年は、埼玉県北部の少子高齢化の進行による市場縮小に対応するため、人口増加が見込める埼玉県南部(さいたま市以南)への出店も強化しています。

「十万石まんじゅうは知ってるけど、実際に食べたことがない」という方々が、手に取っていただけるように、立地を変えたり、販路を工夫したりなど息の長い取り組みが大事だと考えています。

テレビドラマ「陸王」とのコラボが見出した新たな付加価値

━━━テレビドラマ「陸王」とのコラボで話題になったと思います。その反響はいかがでしたでしょうか?

埼玉県行田市を舞台にしたTBSドラマ「陸王」は、創業から100年以上の歴史を誇る老舗足袋メーカー「こはぜ屋」が、新たなランニングシューズ「陸王」の開発に挑戦し、様々な困難に立ち向かいながらも、革新的な商品を生み出していくストーリーを描いています。

行田市は、古くから足袋の一大産地として知られており、優れた職人技と品質の高い足袋で全国的に名を馳せてきました。ドラマ「陸王」のモデルとなった老舗足袋メーカーも、この地で長年にわたり足袋作りに励んできた企業の一つです。

多くのシーンが実際の行田市で撮影されたこともあり、行田市は大きな注目を集めることとなりました。そういった背景から、ある日TBS様より十万石まんじゅうと陸王のコラボ商品の打診をいただいたのです。

私自身、以前よりコラボ商品の可能性を感じていて、色々な企業にアプローチもしていましたが、なかなか実現には至りませんでした。

ですが、いざ陸王とのコラボ商品を販売してみると驚きました。ネット注文も飽和状態となってしまい、店舗では連日行列ができるなど、想像をはるかに超える反響がありました。

「陸王」とのコラボ商品が大きな成功を収めたことをきっかけに、その後、映画「翔んで埼玉」、浦和レッズ様、ドラゴンクエストウォーク様などとのコラボレーションを次々と実現させることができました。

━━━本当に、毎年のようにコラボ商品が発売されていますね。

本当にありがたいと思っています。一方で、急激な需要の増加に伴う課題も浮上しました。

まず、ネット通販の注文が殺到したことで、製造と発送の体制が逼迫しました。「十万石まんじゅう」の品質を維持しつつ、スピーディーに商品を届けるためには、生産ラインの効率化と物流体制の強化が不可欠でした。

結果的に、ご注文数に制限を設けるなどの対策を行いましたが、受注から発送までの一連の業務を円滑に進めるために社内体制の整備も急務となりましたね。

注文の処理、在庫管理、配送手配など、業務量が増大する中で、いかに効率的なオペレーションを実現するか。ネット通販の活用で、新規顧客の開拓と販路拡大を図る一方、製造と発送の体制を整備し、需要の拡大に対応する必要性を感じました。

「多店舗展開」と「機械化」は和菓子業界で珍しかった?

元来、和菓子業界では職人の手作業にこだわり、各町で数店舗で営業する店が多いです。

一方、十万石ふくさやは、最初から多店舗展開を目指し、機械化を推進してきました。創業者の「より多くの人に『十万石まんじゅう』の味を届けたい」という強い思いがあったからです。

機械化を進める一方、「手作業」にこだわる部分も大切にしています。

それが、一つ一つの饅頭に焼印を押す作業です。

「十万石まんじゅう」に、一つとして同じ形のものはありません。和菓子における「唯一無二」の世界観を守るために、最後の仕上げは人の手で行うことにこだわっているのです。

この「機械化」と「手作業」のバランスは、弊社の製法の大きな特徴であり、強みでもあります。効率化を追求しつつも、品質や文化に決して妥協しない。そのために、人の手でしか表現できない「味」を大切にする。

これは、2000年以上の歴史の中で培われてきた和菓子の伝統を守りながら、現代に合わせて進化させていく、弊社の哲学を表しているのかもしれません。

「気候変動」の影響による原材料の調達難、そして「葛藤」。

━━━食品業界は、昨今の気候による影響が特に大きい領域だと伺います。貴社においてはいかがでしょうか?

気候変動による原材料の調達難は、大きな課題となっています。

特に「十万石まんじゅう」に欠かせない高品質な小豆の確保が難しくなってきているのです。

創業以来、「素材と製法へのこだわり」を大切にしてきた弊社にとって、原材料の品質は譲れない条件です。しかし、国産小豆の収穫量は年々減少し、価格は上昇の一途をたどっています。

かといって、より安価な他国産の小豆に切り替えるわけにもいきません。いざ作ってみると一目瞭然。味や色合い、繊細さなど、品質面で国産小豆に及ばないことは明らかです。

この状況に対応するため、十万石ふくさやは産地や農家との長期的な関係構築に力を注いでいます。安定的な調達を実現するには、生産者との信頼関係が欠かせません。

しかし、こうした努力を続けても、原材料コストの上昇は避けられない状況です。正直、品質を守るためには、一定のコストアップは覚悟しなければなりません。

ここで問われるのは、「素材と製法へのこだわり」「美味しさの追求」という創業者の想いをどう守り続けていくかということ。時代の変化に合わせて、何を変え、何を変えずにいくのか。

先代から受け継いだブランド価値を守りつつ、次の世代にバトンをつなぐ責任。一方で、変化する経営環境の中で、時代に合わせて変化していく必要もある。伝統と進化のバランスをどう取っていくのか。

その判断は非常に難しく、経営者としての葛藤も深いものがあります。

自家消費型太陽光発電システムの導入を検討したきっかけ、理由

━━━大変貴重なお話ありがとうございます。そんな中、今回自家消費型太陽光発電システムを導入された背景についてもお伺いしたいです。

弊社だけでなく、食品製造メーカーでは、製造現場の環境改善が課題となっています。

弊社の場合、夏場の工場内は室温40度を超え、蒸す工程による高い湿度も相まって、従業員の熱中症リスクが高い環境でもあります。こういった環境は作業効率の低下にもつながってしまうため、対策が求められていました。

安心して働ける職場を実現するために、弊社ではまず屋根に散水装置を設置しました。一時的には効果があったものの、散水装置の老朽化により十分な冷却効果が得られなくなってきたのです。

そこで検討を始めたのが、太陽光パネルの設置でした。

当初は、発電による電気代の削減脱炭素への取り組みがメインの目的だと考えていましたが、検討を進める中で、むしろ遮熱効果による製造環境の改善につながるのではと認識するようになったのです。

恒電社を選んでいただいた理由

━━━そうだったのですね。その後、結果的に弊社にご用命いただくまでの流れも伺ってよろしいでしょうか。

埼玉県主催の脱炭素経営セミナーに参加した際に、恒電社さんが自家消費型太陽光発電の講師として登壇されていたことが、恒電社を知ったきっかけです。

そのセミナーの内容が印象に残ったため、すぐにお問い合わせをし、営業担当の方から話を伺いました。

お話を伺う中で、埼玉県内での豊富な実績があったことや、営業担当の方が細やかで迅速にご対応いただいたこと、かつ弊社の取引のある金融機関からの高い評判もあり、お願いするなら最初から「恒電社さん一択」と決めていました。

実際に、工事の際の施工管理やスタッフの方々の対応も良く、何一つ心配なく引き渡しまで進めていただきました。

まだ稼働して間もないですが、今後も電気料金の削減のみならず、実際の夏場の遮熱効果についても、効果を注視していきたいと思います。

恒電社の本プロジェクト担当者の声

十万石ふくさや様は、埼玉県におけるSDGsパートナーとして、環境問題への取り組みに積極的な姿勢を示されています。

よって、単に太陽光パネルを設置するのではなく、敷地内にある建物の屋根を最大限に利用し、二酸化炭素の削減および電力消費の軽減に貢献するための設計とご提案を行いました。

また補助金を活用するかについては、お客様だけで判断することが難しいことだと認識しておりますので、 補助金が活用できる条件やもたらす効果を明確にすることで、「補助金なし」でも十分な投資効果が期待できることをご理解いただきました。

太陽光パネルを設置した工場では、各々異なる製造工程が実施されており、特に一部の屋根では、おまんじゅうを蒸し上げる工程から発生する煙が換気口から排出されていました。

設置する太陽光パネルにその煙が当たり続けてしまうと発電効率が落ちてしまう為、煙を避ける形でパネルの配置を行うなど、 お客様の製造工程に応じた設計でご提案することを心がけました。

今後の展望

━━━ありがとうございます。最後に、今後の展望についても教えてください。

老舗企業にとって、創業者の想いと技術を守り、品質を維持し続けることは、ブランドの生命線と言えます。十万石ふくさやも、素材選びから製法に至るまで、細部まで徹底的にこだわる姿勢を貫いてきました。

この考えを次世代に継承していくことは、経営者にとって大きな責務です。しかし、同時に、時代の変化を捉え、ブランドを進化させていくことも求められます。

「素材と製法へのこだわり」「美味しさの追求」という伝統的な哲学を守りつつ、時代に合わせて変化していく。その両立は容易ではありません。

この難しい舵取りを行うためには、全従業員の理解と協力が不可欠です。十万石ふくさやの伝統を理解し、体現できる人材を育成していくことが、次世代へと想いをつないでいく上で欠かせないと思っています。

これからも埼玉県を代表するメーカーであるという自覚を持ち、100年、そして200年続いていく企業となるように着実に取り組みを進めていきます。

———本日は貴重なお話しありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

インタビュワー・この記事を書いた人

恒石陣汰
株式会社恒電社

恒石陣汰

前職にて、イスラエル発のWEBマーケティングツール「SimilarWeb」「DynamicYield」のセールス・カスタマーサクセスを担当。その後、日本における再生可能エネルギーの普及と、電力業界に大きな可能性を感じ、2020年に恒電社に入社。現在は、経営企画室長兼マーケティング責任者として従事。YouTubeなどを通じた、電力・エネルギー業界のマクロ的な情報提供をはじめ、導入事例記事では、インタビュアー・記事の執筆も行なっている。

クリエイティブ担当

岩見啓明
株式会社恒電社

岩見啓明

クリエイター。恒電社では動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告と幅広く施策を担当。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴も。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)を取得。

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